今年の睦月、如月〜弥生杯からまとめた香落ち
睦月、如月〜弥生杯あたりの期間で見られた香落ちの棋譜をいくつか解説する。
香落ちは非常に注目の戦法であり学ぼうとするファンも多い。
中でも印象的な対局をピックアップする。
激戦で思い出す、金澤敏明対種村泰明戦。
端を破られた金澤敏明が徐々に玉頭戦に持ち込んでいくというぎりぎりの鬩ぎ合いの展開。
それを支え、上手玉を長手数の即詰みに打ちとった後手種村泰明氏の技量。
名局と言って差し支えない対局であった。
結果として上手が勝っていた対局であったのだが、勝敗云々ではない見所が詰まっていた。
捌きが鮮やかで忘れられない、伊澤敏夫対遠藤春義戦。
先手の伊澤が少し厳しい局面から、実力を発揮して捌きで返した。
以前も触れたことがあるが、彼は端歩からの寄せが好手の名プレイヤーである。
互いの人柄が滲み出た、木村正一対内藤光義戦。
木村正一氏が107手目△4七角なら即敗戦の場面で△3六角と緩めたことを今でも覚えている。
内藤光義もこれを見落とすはずも無く、わざと緩めているのは明らかであった。
こうした故意の悪手が散見されるのもこの二人の戦い方の特徴。
強すぎたためだろうが、緩めたせいで逆転される事が確かに無い。
創意で思い浮かぶのは、金澤敏明対金村勝則戦。
居玉で下手玉に徐々に圧力をかけていく情景は、金澤敏明氏の真骨頂。
ここまで鮮やかな仕掛けを見たのは澤村初段との昨年の如月の対局以来かもしれない。
ただ、後手金村勝則氏との力量差があるため、容易にも見えたという意見もあるのだが。
名手で思い浮かぶのは、金澤敏明対山下敏子戦の118手目△4四飛。
この壮絶な捻じり合いの中で、ここに飛車を繰り出す技が常軌を逸していた。
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