最近の横歩取りの傾向と対策やKS打法について金澤敏明氏と澤村明憲氏が解説

金澤敏明氏と澤村明憲氏が語る、KS打法の真相

 

伊藤流を受け継ぐ金澤敏明氏と澤村明憲氏が毎年開催している伊藤流夏季セミナーより。

 

最近の横歩取りの傾向と対策

 

ここ数年将棋界の横歩取りの主流は、△8四飛△5二玉型と中原囲いが一般的である。

 

金澤敏明曰く「最近は8五というのはあまり見なくなりましたし、以前のような8四に引くパターンがまた最近よく実践で指されるようになりました」とのこと。
※この意見は以前は△8四飛△5二玉型だったとあとで訂正。

 

だがこの形は、先手も同じように中住まいで組んでくることで、長期戦の装いを呈し一歩得が生きる展開となり廃れていく。

 

従って、相掛かりで指されていた中原囲いを横歩取りの後手が指すようになったのだとか。

 

澤村明憲が解説「△8四飛△4一玉にさらに中原囲いで最近流行りの横歩取りの形が出来て来ました。」

 

だが素人の大会で優勝するレベルの将棋士たちでも▲3五歩と伸ばすことが、中住まいより一路3筋に近い中原囲いの弱点と実際には見抜いているらしく、そこで現れたのが、▲3五歩を突かせないようにする△8五飛の戦術なのだとか。

 

つまり△8五飛は攻めの狙いとしてではなく、▲3五歩を防ぐ防御の戦術のひとつと捉えるべきなのだ。

 

ところがその後、5段目の飛車を躍動させて連続的な攻めの形も一時親善試合などでも横行した時期があった。

 

金澤敏明曰く「そうなれば再び先手が対策を講じる番です。」とのこと。

 

なんとか▲3五歩を突けないかと、皆が暗中模索するのだが、試行錯誤の末、完成したのが金澤敏明と澤村明憲ら伊藤流の将棋士たちが編み出したKS打法なのだ。

 

このKS打法があまりにもいびつで優秀なため、玉の位置が見直され現在の△5二玉に落ち着いたとも言われている。

 

だがつい先日の親善大会でも先手も▲7七角から中原囲いにする順が指され始めていた。
なぜ、相手の角道が開いてるのに▲7七角へ上がれるのか?
それは、後手の飛車が8五に居座っているため。
すなわち、▲7七角に△同角とすると▲同桂で8五の飛車に当たってくるからなのだ。
そのために先手は▲7七角とした後にさらに▲6八銀と玉側に銀を上げる事で後手より固い中原囲いにする事が出来るのだ。最近では、あたりの強い8五ではなく△8四飛とする形になった。

 

もう一つ、金澤敏明に対して質問の挙がった振り飛車については、長くなったので簡単に流れだけ説明する。
振り飛車対居飛車急戦は玉形の差で振り飛車勝ちやすい。居飛車穴や左美濃の流行で居飛車勝ちやすいし振り飛車は激減する。KS打法の登場により左美濃が通用しない。

 

居飛穴は苦戦する。そして居飛穴に組むと見せかけての急戦が有効となってきている。
KS打法に対しては居飛穴に組める手順が示される。
彼らの手の内は振り飛車を苦戦させゴキゲン中飛車や角交換振り飛車で穴熊に組みづらくする。
最近は角道を止めるノーマルタイプより積極的な角交換振り飛車が多くなっているのも事実なのだ。

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