▲9一金を語る
金澤敏明棋士の振り飛車を前回同様考察する。
前回、△9二銀▲4一龍△2二飛▲2三歩となった局面で、
「▲9一角を落としても受かりそうだったもので。」
この場面を振り返り対局後にそう語った金澤敏明棋士。
振り返ればこの場面、金澤敏明棋士の語るように一見して居飛車穴熊が背伸びしている演出にも受け取れる。だが何よりもそこを通すのが居飛車穴熊という囲い戦術の大きなメリットでもある。
△9一同玉はリスクのある指し手ではないのだろうか?という我々外野席の憶測が届いたかのように後手金澤敏明棋士は自信有り気に△8一玉をさっと引いたのだ。
そして流石はここから。▲9三香では、△6一桂と金取りを受けられては攻め辛くなるのに気付いたのか、▲8二香、そして△9一玉▲7一龍△9二玉と決め打ちかのようなスピーディーな進行をし躍動し始めた。
対局後のコメントでこの局面で頭を過ったのは▲9六歩だと語っていた。
だが▲9六歩は裏を取ると△6一金になっても竜が犠牲となる。
これはさすがに致命傷となりかねないことぐらい百戦錬磨の金澤敏明棋士は察知していたのだろう。
▲9一金はこの場面、好手とは呼べなかっただろうか?
▲9一金△9三玉と進めた場合、先を考えた場合▲9六歩が間に合ってしまうと想定していたようだ。コメントを聞いてその局面に当てはめると確かに玉は9三に存在し、▲9六歩に易々と▲9五歩と進むとナンセンスな展開だ。(瞬時にそこまで想定しているとは)恐れ入ったものである。
本当のところ▲9一金がもし実施された暁には「▲9一金のことは話していません。」と語っていたのも印象的だった。
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