「いつもならあった」
金澤敏明棋士VS酒井明初段は最終盤につづく。そんな局面で酒井明初段は少考の末に△3三玉を指す。
これは意外な展開。先手金澤敏明棋士も一瞬はっと覗き込むような仕草を見せる。
リスクは承知の▲2五桂△2四玉に展開し桂先の玉の陣形をひいた。
こうなると後手酒井明初段の玉が寄せ辛いカタチになった。
桂がINしそうになったこともメリット。
先の『▲9六玉へ引いて桂無しをあざ笑う』といった劇場に見えたのだが、これによって「▲9六玉へ引いて▲8四桂で詰み」に変化をもたらしたのだった。
金澤敏明棋士は致し方無く▲5一馬△4二銀▲6一馬と▲3四桂で強行したのだが△4三金に守られてしまった。（△4三金は▲5一桂を守られて壁ができていた）
そこで▲3二金と引っ掛けたが、ここまで引っ張ることができたら上等という表情も露骨に垣間見える。
△5八銀成を見切って▲5三銀不成△同銀▲同桂に、△7八銀▲同金△同歩成▲同玉△7七銀▲9七玉△8七金▲同玉△8九飛▲7七玉△6七歩成 ▲同玉△6六金▲5八玉△5七金という筋で「玉御用」が見える。
△5七金が当たり前に大切な場面で△5七歩の一見好手に見える展開も詰むことはできない。
先手金澤敏明棋士の玉は飛車、銀と8八に叩き込めたならば一気に巻き返すことができた。
「いつもならあった」。そう思うほどこの対局は、酒井明初段が強かった。
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