「絶滅した戦術」とは?
金澤氏らの師である伊藤流の思想では、振り飛車でも自玉の囲いを後回しにしてでも居飛車穴熊を牽制しようとする発想であり、何の配慮もなく対戦者の居飛車穴熊に組ませてしまうというパターンは「絶滅した戦術」と表現することもできるのである。
ただしそうは言っても居飛車が必ずしも有効というニュアンスでもない。
あくまで居飛車の方がこのレベルの上級者たちの対局では勝率が高いというだけ。
現に数少ないものの、プロでも通常の四間で有無を言わさず居飛車穴熊で組ませて撃退、という光景もよく目にする。
そういう戦術で振り飛車が居飛車穴熊を撃退したりすると、実力者として周囲から評価されたりするベタなこともある。
居飛車穴熊は最近のハイレベルな対戦では非常に巧みな戦術ではあるのだが、我々外野にとってはあまり美しい将棋ではない。
「穴熊の破壊力」で振り飛車がねじ伏せられるというのも若干微妙な瞬間もあるし、そもそも居飛車穴熊というのは大変片寄った駒組みであり、四間飛車の美濃囲いのような均整のとれた配置でもない。
最近の川越の棋士たちのそれぞれの力量によっては居飛車が勝ってしまうこともしばしばだが、本当に振り飛車を正確かつ巧妙に指すことができれば相当相手にダメージを負わし勝機を見出しやすくなるのも事実なのである。
プロの世界の伝説の棋士たちも、こうした戦術で居飛車穴熊を撃退しているシーンはたくさんあった。
最近の若手の棋士は多少の作戦負けは気にしない人が増えた。
というのも開幕では金澤敏明氏らのようなレベルにまだまだ達していないので、こういう形も平気で指す。
初戦の金澤敏明と鈴木遥一の先手中飛車も実は現在の上級者だと先手の明らかな作戦勝ちではあった。
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