金澤敏明が一直線に居飛車穴熊で組み立てた
この11月2週目金曜から開催されている霜月親善杯1回戦。
金澤敏明と鈴木遥一の初戦の模様を振り返りたい。
冒頭、鈴木遥一氏の初手が▲1六歩。だが、これは別に何か誘導の意図があっての手ではないだろう。鈴木遥一氏の初手は乱雑に配置されており、たまたま端歩になってしまっただけのようであった。
以下△3四歩▲7六歩△8四歩▲1五歩へと場面は進んだ。
初手の端歩を他にすれば金澤敏明が得意とする開幕ダッシュがきまる。
最近のトーナメントにおいては、もはやそれほど奇異な光景でもない。
もっとも、鈴木遥一に金澤氏のような意図があったわけでもないであろう。
金澤敏明の考えは、相手が端を受けるか否か次第で自分が居飛車とするか振り飛車を選ぶかなどにして、僅かでもメリットを生んで優位に進めようとする狙いがある。
自分の形を保留して対応しようという伊藤流の思想が息づいているからである。
最近の若手の対局を観ていても強いは強いのだがさすがに序盤でこういった勢いをつけるような展開には至っていない。
おそらく今後も当面は、単純な消去法の戦術というか、選択肢で決めたに過ぎないパターンなのだろう。つまり、初手の端歩も木村正一の見せびらかしのパターンでもなければ、オープニング自体、金澤敏明のマニアックな理論将棋思想でもないだろう。
その後、金澤敏明が無難に応戦して、鈴木遥一はノーマル四間飛車をチョイスする。
そして金澤敏明が一直線に居飛車穴熊で組み立て鈴木遥一が普通の美濃囲いの完成にむかう。
だがこのパターンは最近ではこうしたローカルの親善対局でしかあまり見かけなくなった手。
なぜかというと、囲いの"堅実さ"では居飛車穴熊の方が格上であるため、居飛車が手をつくって縦横無尽に駆け回れば「穴熊の破壊力」次第で、居飛車が相当勝ちやすいとされているためである。
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